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日本のアオウオ釣り事情
【幻の怪魚】
一部の人間からそう呼ばれる魚。それがアオウオ。
最大全長が170センチを超える巨体の持ち主で、元はといえば大陸からの使者。いわゆる外来魚というやつだ。
さて、そんなアオウオですが、【幻の怪魚】と呼ばれている割には釣り方自体は案外簡単な物です。
いや。「簡単」というと語弊があるかもしれません。
勿論釣る難易度の高い魚で、素人がちゃちゃっと釣竿を持って狙ってもまず釣ることはできないでしょう。
しかし、アオウオの釣りは日本では完全に確立されており、有名どころでは「霞ヶ浦」や「利根川」なんかが、いわゆるメジャーフィールドになっています。
ある程度の技量と経験を持った釣り人であれば、メジャーフィールドでのアオウオの回遊ポイントを絞るのはそれほど難しいことではないのです。
そしてその場所でひたすら粘れば釣る事ができる。と。(この粘るという所がかなり大変ですが….。)
話は変わりますが、アオウオという魚は非常にかっこいいのです。(私的感想)
魚狂いな僕としては狙わずにはいられないターゲットの一つでした。
そこである程度コロナが落ち着き、緊張感が和らいだ2021年11月、「アオウオを狙おう」と立ち上がったわけです。
ちょうどそのタイミング、横浜でバライティ番組のロケがあったので
「どうせ関東行くならば、ついでにアオウオ狙ってみよう!」
となったわけです。
(交通費を番組が出してくれるので…(小声))
アオウオの新生息地を求めて放浪す。
無事(?)撮影を終えた僕は、早速アオウオの情報を集めました。
しかし、集めていた情報は「霞ヶ浦」や「利根川」のアオウオについてではなく、日本全国のアオウオ情報でした。
「メジャーポイントのアオウオは【幻の怪魚】なんかじゃない!」
もちろんこれは僕個人の考え方です。
他の人の釣果にケチをつけるなんてダサい真似はしたくないですし、考え方として、僕には利根川でアオウオを釣るのは向いていないと考えただけなのです…。
しかし、近年のメジャーポイント事情を聞くと「なんか違う」感が強く生まれました。
釣り人同士のトラブルの先にある【幻の怪魚】は僕の胸には刺さりません。
釣り場ではいつだってジェントルマンでいましょう!
そんなわけで例のごとく前置きが長くなりましたが、メジャーポイントでは無い場所のアオウオ情報を集めようとしました。
しかし、これが本当に難しく。メジャーポイントの水域以外のアオウオの情報は全くと言っていいほど出てきません。
いつものやり方でグーグルで検索をかけて、ここまで情報の出てこない魚は初めてでしたのでかなり苦労しました。
最終的には完全に聞き込みと知り合いに当たるというところで落ち着いたわけですが。
この21世紀に中々に情報の出てこない日本国内の淡水魚というものには中々にムラッとしました。
しかしこの後、冗談言ってられないほど苦労することになる訳です。
自分のやっている事、思ってる以上に難しい事だった。
ネットが役に立たないのであれば、とにかく足で稼ぐしかないということになります。
まずは関東の水辺で目をつけた場所を片っ端から潰していきました。
よくわからない場所にアオウオがいるとするならば、草魚の放流に混ざった可能性のある場所かなと。
そしてその考え方は早々に当たりを引き、最初に生息が確認できた場所は関東の某一級河川。
このエリアには確実にアオウオがいるとのことでしたので少し粘ってはみたのですが、全く反応はありませんでした。
ここら辺で気づきました
あれ?これむずくね?
難しい事だとやっとここで気がついた訳です。
勿論初めから自分で難易度を上げるつもりで始めたのですが、ここまで難しいことだとは想像できませんでした。
理由としては何箇所かアオウオのいる水域を絞ることはできたのですが、何せ個体数が少なすぎたのです。
魔がさして公園のアオウオでも釣ってやろうか?と思ったこともありました。(ダメです)
しかしながらアオウオという魚の性質上、バスや草魚のように日本中に放流されるという事が少ないのです。
どこかで事故的にアオウオが混ざった場所を見つけなければ。
わずかな情報を頼りに関東から関西へも飛びました。
やってきた大阪。なんだかんだで3日間ほど滞在したが、目をつけていた場所は早々にいない事が判明し、多少の観光が混ざった。
こんな感じで関西を堪能した後、関東に帰還。
そして関東でのアオウオ捜索を再開しました。
やはり関東でのアオウオ探しも難航し、多摩川にアオウオが生息するということを知るも、範囲が広すぎて可能性を見出せませんでした。
こんな感じの支流であればアオウオがいれば目視で確認できます。
しかしながら気温も下がった時期という事もあり、鯉すら確認出来ないという…。
ここら辺で規模の大きい河川でのアオウオは諦めて、もっと小規模な河川をメインに探すことにしました。
大規模な河川はアオウオがいると分かっても範囲が広すぎて釣るのはほぼ不可能。それなら小規模な水路なんかでアオウオを目視で確認して釣るのが確実だろうと。
少し方向性を変えてひたすらに歩き回りました。
膨大な時間と労力をかけて遂に。
実際に記事にすると伝わりにくいですが、新潟を出てから2週間近く放浪しました。
交通機関で目をつけた水辺の近くまで行っては徒歩で歩いて捜索する日々。暗くなったらそこら辺の公園で仮眠。
久しい感覚で高揚感もありましたが、それ以上に魚体を見れない日々はキツかったです。
そんな感じで放浪している時。関東の一つの河川が目に止まりました。
もちろん実際に足を運んでみた訳ですが、そこで遂に幻の怪魚を見つけるのです。
橋の上からその川を覗くと、明らかにコイでは無い細長いシルエットの魚が泳いでいます。
鯉の群れの真下にいるその魚は、どうみても鯉の比でない巨体。
そしてその魚体は”藍錆色”に鈍く輝いていました。
うぉ!!アオ(アオウオ)だろアレ!!
その魚体を見つけた瞬間、これまでの全ての苦労が報われたような気がしました。
急いで道具と仕掛けを準備し、アオウオめがけてロッドを構える。
そして鼻先に餌をつけた針を投げると
アオウオは一瞬躊躇して針を吸い込んだ。
食った!!
ゴッと合わせると巨体の鈍い感触が伝わってくる。
勝手な想像で「アオウオは細身だからそこまで引かない」と考えていたけれども、全くそんなことはありませんでした。
巨体から繰り出されるトルクフルな突っ込みは、かなり強いロッドも容赦無く絞りました。
え?アオってこんな引くの….?状態
しかしながら5分ほど格闘すると向こうもかなり弱って来たようでした。
「今ならいける!!」
向こうの動きが鈍くなったタイミングで巨体に空気を吸わせ、そのまま浅瀬に引きずり上げる。
そして自分も急いで川に降りてアオウオの元へダッシュ。
最後はその口元にボガ(魚用拘束具)を噛ませて決着。
(小声で)ウッシャァぁっぁあぁ……!!!
【幻の怪魚】アオウオ!獲ったぜ!
やっと抱けた。長かった。そして遠かった。
なんだこの魚?カッコ良すぎるだろ。
つーか君の仲間達、個体数少なすぎるだろ。
どんだけ探させるんだよ。
交通費すごいことになってるんだぞ。
僕の嫌味をネチネチと聞いたアオウオは、水の中よりも一層鈍く輝いて見えました。
アオウオを抱いた日。
嫌味も愛情表現。
そんなカッコ良すぎるアオウオの体を見ていきたいと思います。
まず、このアオウオは全長が120センチほどでした。アオウオのアベレージサイズを知っている方ならば分かるかと思いますが、そこまで大きくありません。
少し若い個体といった感じです。それでも120センチもあるから十分に大きいのですが。
アオウオを語る上で外せないのがこの鼻の大きさです。
この鼻。目の大きさに届きそうなぐらい大きな鼻です。というか目よりも鼻の方が大きくないですか?
アオウオの主食はタニシなどの貝類です。この大きな鼻で貝類を探しているのではないでしょうか。
ちなみにコイのようなヒゲはありません。
頭全体というか体全体がシュッとしたフォルムをしており、同じく四大家魚の草魚やハクレンとは雰囲気が大きく異なります。なんというか、アオウオの方がイケメンに感じてしまいます….。
そしてこの大きな背鰭も特徴的な部分の一つでしょう。
太くて逞しい「棘」。
ヒレの形は鯉とは違い、どちらかというと草魚の鰭に近い形です。
三角形でいかにもアオウオ!といったヒレです、魚体の大きさとの比率的にもかなり大きく感じました。
こちらがあのトルクのある引きを生み出していた尾ビレです。
やはり大きいです。ここまでのサイズがあると水を掻く力も相当なものになるでしょう。
勿論その分のカロリー消費量はあるかと思いますが、アオウオを釣る事ができた水域では餌が豊富な様でしたので心配はいらなそうです。
尻尾の形状は完全にコイ科の魚といった感じでした。ここはコイや草魚と変わらないといって良いでしょう。
同じく四大家魚のハクレン(荒川にて)
尾ビレはアオウオに比べると若干尖っているかな?といった感じ。
切れてしまっているが、背鰭の形はかなり近いかと。しかしながら顔つきは全くもって似てない。食性の違いから、口の構造も異なる。
再びアオウオの口。どうですか?同じ四大家魚のコイ科とは思えなくないですか?
にしてもハクレンの後に写真を見るとカッコよく見えます。(勿論ハクレンのブサカワも好きですが)
利根川、霞水系以外でのアオウオ釣り、総括。
かなり時間はかかりましたが、最終的には目標のアオウオを手にする事ができました。
生息する水域はかなり限られていますが、我武者羅に歩き回ればなんとか釣る事ができる魚なんだなというのが一つ目の感想です。
そんでもって、謎のこだわりをもって狙ったアオウオですが、やはりサイズは利根川や霞ヶ浦の方が出るのかな?とも思いました。しかし、サイズではない価値がこの1匹にはあります。
文明社会の今でも簡単には情報を得ることが出来ない孤立水系の小規模河川アオウオ。最終的に水辺を歩いた距離は距離は116kmでした。
そこまでしないと釣れない魚。メジャーポイントでは得られないナニカ。
本当の意味での【幻】を追い続けた日々が幕を閉じました。