アメリカナマズ。ここまでとは思わなかった。

相変わらず世間を定期的に騒がせる外来魚問題。僕ら釣り人は一般人に比べると多少は関心があるものと自負しているところです。有名どころのブラックバスやブルーギル、雷魚等々はすっかりと耳に馴染んだ名前です。




中国四大家魚(全て外来魚)
ソウギョ、アオウオ、ハクレン、コクレン
どれも最大で1mを超える大型の淡水魚達。原産地の一つである中国では一般家庭に並ぶ食材であり、本場の市場に行くと食用の魚が水槽の中に入れられ、生きた状態で販売されている。

世間一般に対してどれだけの権利を獲得したのかは分かりませんが、我々釣り人の間ではすっかりと移民としての権利を獲得し、ターゲットとして親しまれている魚達です。
さて、ここ数年少しづつ名前を聞くようになった魚がもう一種。
アメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)というヤツです。


日本には数種類の在来ナマズが生息しているのですが、ここ数年で一気に勢力を拡大してきたのがアメリカナマズ。
生息エリアの一つである関西に越してきて約1年の筆者が、現地のリアルを紹介していきたいと思います。
アメリカナマズと出会ったきっかけ。
2023年に関西に越してきて、琵琶湖水系の河川である魚追い続けている際にアメリカナマズが登場しました。
察しの良い方であればお分かりになると思いますが、狙っていたのはビワコオオナマズ。琵琶湖水系固有の在来淡水魚になります。

この魚を追い続けて琵琶湖水系の瀬田川や宇治川近辺を釣り歩いている時に、アメリカナマズを何度も釣るハメになったのです。
ビワコオオナマズを狙ってアユや小魚を使った餌釣りをしていると、1日に3、4本もアメリカナマズが釣れる事が多々ありました。

写真の釣り場は瀬田川の有名ポイント。この場所でもアメリカナマズを釣り上げました。
関西に越してきた初期はビワコオオナマズを狙う際に餌釣りもしていたのですが、ここ最近はめっきりしなくなってしまいました。それに比例してか、ビワコオオナマズを狙っている際にアメリカナマズを目撃することも少なくなったように感じます。
釣っているうちに気づいたのですが、アメリカナマズはニオイのないハードルアーに対してはあまり反応が良くない様です。

ニオイ付きのワームや生餌なんかには反応が良いのですが、ハードルアーを使ってアメリカナマズが釣れることはかなり稀でした。

それでも場所によってはルアーで釣る事ができ、霞ヶ浦水系では実際にアメリカナマズをスピナーで釣る場面を見せて頂いた事もあります。
釣れる釣れないの話ではハードルアーでも釣れるのですが、狙って釣るのであれば餌なんかを使うのが手堅いように感じます。日本にいる他のナマズ、(ビワコオオナマズやマナマズ、タニガワ、イワトコなど)はルアーでもなんでも簡単に好反応を得ることができるのですが、これtらのシルルス属とは違い、アメリカナマズが極端にハードルアーへの反応が悪い理由を考えてみたところ、パッと思い付く違いはヒゲの本数なんかでした。


見比べると非常に分かりやすのですが、このヒゲこそが感覚器官として非常に有効な役割を果たしているのではないかな?と思うのです。
多くの日本のナマズは約2本のヒゲを持っているのに対してアメリカナマズは小さいものを併せて約6本のヒゲを持っているのが分かります。(”約”と記したのは個体によってヒゲが多かったり欠損している場合があるため)
この違いがアメリカナマズをルアーフィッシングのターゲットとして確立するのが難しい理由なのかもしれません。
実際、どれだけやばいのか?
ビワコオオナマズを狙っていると釣れる、アメリカナマズ。実際にどれだけ繁殖しているのでしょうか?
ここ近年、あっちこっちの水系でアメリカナマズの生息が新たに確認されたとニュースで取り上げられているところです。つい先日、北海道でも生息が確認されたとニュースになっていました。
特に数が多いのは琵琶湖水系の河川や霞水系、利根川などなど。生息しているというのであれば首都圏近郊の河川は次々と名前が挙がります。また、関西圏では京都府の木津川や高山ダムにも生息しており、生息域拡大に対して完全に歯止めがかかっていない状態です。

ようするに「あっちこっちで増えてますよ〜」なのですが、この魚が増えると何がどう”やばい”のでしょうか?
まず、我々釣り人が強く感じるのは在来種の減少?です。
”?”というのは実際に調査して個体数を調べたりしたわけでは無い為。肌感覚の話になる為です。
地元の釣り人に話を聞いていると、以前までビワコオオナマズが高確率で潜んでいた一級ポイントではアメリカナマズばかり釣れるようになったとの事です。実際に僕自身もビワコオオナマズを狙っている中で、「ここはビワナマいるだろ!」と思った場所でアメリカナマズを釣った事が多々ありました。
サイズによってはビワコオオナマズよりも縄張り争いで優位になり得ますし、増加傾向にある個体数で押し切られればビワコオオナマズが減っていくといった可能性もあります。
また、うなぎや鮎なんかの在来魚に対してもかなりの脅威になっていると思うのです。琵琶湖及び瀬田川の漁師さんと話をする機会があったのですが、うなぎ用の延縄にアメリカナマズがかかってくることが多くなったと言っていました。それに加え、うなぎ釣りをしている淀川や宇治川の釣り人の話でも、うなぎ仕掛けにアメリカナマズが掛かる事が多々あるとの事です。

実際、関西でアメリカナマズの幼魚を釣った事もありますし、その個体数の増加スピードから見ても繁殖しているのは間違いないでしょう。

一度アメリカナマズが溜まっている場所を見つけると、幼魚クラスであれっばひっきりなしにアタリが出て釣れ続ける事があります。ちなみにですが、関東圏の荒川水系だったか多摩川水系だったかでウナギ釣りをした際にもひっきりなしに当たりがあり、アメリカナマズの幼魚が多数釣れた事があります。ウナギや在来ナマズと生息域が完全に被っているのも問題の一つかもしれません。
実際に食べると美味しい。

そのビジュアルと目つきから、口にするのは少々抵抗があるかもしれませんが、フツーに食べれるのがアメリカナマズの良いところなのです。
以前は恰もゲテモノ料理・食材のように紹介されていましたが、フツーに食べることが出来ます。筆者自身、関西に越してきてからアメリカナマズに対して一般料理の食材としての見方が強くなり、定期的に釣りに行っては食卓に出しています。

色々な料理を試してみて、最終少量を生食してみたりもしたのですが、臭みなんかはそこまで感じませんでした。同居人にも一般食材を装って振る舞ってみたりしてるのですが、フツーに食べてくれています。

水系・水質によりますが、比較的綺麗な場所のアメリカナマズは身自体から臭みを全く感じることが出来ません。それどころかブラックバスや在来のマナマズに比べて身の味が濃いように感じました。


夏場のマナマズは完全淡白、比較的無個性な白身という印象があるのですが、アメリカナマズには独特なジャーキー感?風味?のようなものを遠くに感じました。臭みとはまた別の、海の根魚のような風味にも近いような。
関東圏の霞ヶ浦水系なんかで釣れたものは素材の味を活かす事に対して若干の抵抗があるのですが、関西の比較的水質の良い場所の魚であれば勇気を使わずに調味料控えめで食べることが出来ます。個人的には日本の安定供給できる淡水外来魚の中でトップクラスに好きな魚です。
ちなみに外来魚系料理の中で現段階トップはアリゲーターガーの鍋。

身自体の味が非常に強く、食感も硬め。それでいて繊維っぽい身質がクセになった。お金を払ってもいいと思えるレベルだったのですが解体が大変過ぎて割に合わない感が。

ちょっとグロいので白黒です。電ノコとかでないとぶつ切りは不可能に近い印象。ガノイン鱗の隙間に包丁を差し込んでなんとかか解体。

安定供給と捌く手間だったりを加味すると、アメリカナマズは非常に素晴らしい食材だと思うのです。
巷では食料問題が定期的に取り上げられていますが、なぜこの魚を食べないのか?
”外来魚駆除”という単語はあまり好きでは無いのですが、ここまでアメリカナマズが増殖した今、生態系のバランスを整える為の介入という事でこの魚を取り上げても良いと思うのです。

関西圏に限った話でなく、外国人労働者がナマズや雷魚、バスなんかを釣って食べている光景をよく目にします。釣って食べる訳なので、リリース主義者が大半を占めている日本の炭水ルアーフィッシャーマンと衝突している光景を度々目にするわけなのですが、彼らからしてもアメリカナマズは魅力的な食材に見えるはずです。
僕自身もちょこちょこ顔を合わせるギャング針のついた竿を片手に自転車に乗ったベトナム人達にこの魚を布教しようと企んでいるところです。
琵琶湖、淀川水系も”霞ヶ浦”になってしまうのか?

淀川や宇治川、瀬田川なんかでウナギ釣りをしている釣り人に話を聞くと、明らかにアメリカナマズの魚影は濃くなっているとの事でした。
関東の霞ヶ浦でアメリカナマズやハクレンといった外来魚が増殖し、在来の淡水魚の姿が激減した様に、関西の水系も同じ様な道を辿ってしまうのでしょうか?

「我々釣り人にできる事は〜」なんて、説教くさい事言いたくないのですが、釣る機会があったならばぜひ一度食べてみて欲しいものです。
実際に食料として優秀だと思いますし、釣りモノとしても手軽で引きが強い事もあって魅力的だと思います。実際に関西の釣具屋さんでもアメリカナマズ専用の釣り餌を取り扱う店舗をちらほらと見る様になりました。

関西の釣りの要であったバス釣りが不調と言われている今、新たな釣り物として脚光を浴びるべきはチャビングや鮎イングでなく、アメリカナマズ、なのかも知れませんね。