チョウザメが次々と釣られる怪現象が。
僕が高校生の時だったか?
宮崎県の大淀川水系でチョウザメが次々と釣られる怪現象が起こったと、ネットニュースになっているのを目にしたのです。
(記憶が正しければ)当時僕は高校生で、某感染症での緊急事態宣言中。そんな中で迎えた夏休み。
当時から大型淡水魚に夢中だった僕は当然「宮崎までチョウザメ釣り行きたい!」となった訳ですが、残念ながら叶わず。地元で黙々と雷魚を釣り続けていた訳です。

なぜ故、特定水系でのみ本来そこにいる筈のない魚がいるのか?って話なのですが。
(色々言われてたりしますが、)要するに上流域or関連水域に点在している養殖場が一つの要因になっているみたいです。確実にそこから逃げ出したと断言はしませんが、チョウザメを追う中で色々な話を耳にし、ここに書くべきでは無いような内容の話も加味し、あくまで”一つの要因”としておきます。

かつては日本にもチョウザメがいた。
かつては日本にもチョウザメがいたそうです。

大阪の吹田にある民増博物館に行った際に見た、アイヌの物品には完全に蝶鮫と思われるものが書かれていました。ユペと呼ばれ、身から皮まで余す事なく生活に使ったそうです。この魚、北海道の各河川に上ってきていてすでに絶滅したとされているのですが、この令和の時代にも”ユペ”が上ってくる河川は確かに残っています。近年でもちらほらと目撃情報や釣果が報告されており、僕ら釣り人に夢を見せてくれているのです。
現在北海道以外の水域でチョウザメを狙おうと思ったら前述した通り九州や四国地方の脱走個体を狙うのが最も可能性が高いかもしれません。

屋内型釣り堀やトラウトの管理釣り場なんか行くとたまにチョウザメを放流している所があるのですが、サイズを狙おうと思うと中々難しいものがあります。
チョウザメが定着している水系とは
チョウザメが定着している水系、有名どころで言えば先ほど書いた大淀川水系なんかが最も高確率かつ有名な水域になると思います。
他にも九州の関連水系や四国の小規模河川、バス釣りで有名な五三川や僕の地元新潟の信濃川なんかでも捕獲例があります。

(高校生の時に釣った信濃川のシーバス)
信濃川ではバスやシーバスを狙っていた釣り人が釣ったとか、そんな話だったと思います。大淀川水系ではうなぎ釣りの仕掛けに食ってきたとか。
専門で狙うのであれば餌釣りを用いたぶっ込み釣りが高確率かなと思います。ちなみにチョウザメの本場ではウグイやトラウトの切り身や生き餌を使ってチョウザメを狙うそうです。
チョウザメを狙って九州へ
チョウザメが釣りたいという学生の頃の課題を終わらせるべく、2023年ごろから九州地方各所に足を運ぶようになりました。

チョウザメと並行して九州のポテンシャルを満喫。川も海も、魚の宝庫でした。

基本的には宮崎県や鹿児島、そして大分県の水系を片っ端から調査しました。

この川いるかも?の判断基準は「チョウザメ関連施設が隣接しているか否か」というところ。生き物を扱って、天然の水域の力を借りている上で、完全に逃げ出さないようにするってのも中々難しい話なのかな?と思います。
関西の某マス釣り場からもしょっちゅう魚が逃げ出して、地元の方がしれっと釣り上げて晩御飯にしているという話もよく聞きます。

逃げ出す原因としては網やネットが破れていたとか増水による氾濫、魚がイレギュラーな場所に入り込んだことが原因だったりと色々ありますが、跳ねる癖がある魚だと自力で生け簀横の水路に飛び込むなんてこともあるかもしれません。チョウザメに関しては跳ねることがあるとの事前情報を得ていたので養殖場近辺の水路帯もちらほら調査して行きました。

関連水系を回る中で基本的には川幅15m以内の小規模な場所をメインとしました。理由は単に「魚が見えないとやる気が出ないから」といったお粗末なもの。ある程度川幅のある河川は橋の上から覗き込んだり堰下の一級場所のみ軽く流すくらいで収めておきました。

この時、季節はまだ夏。半袖短パンでもフットワーク軽く各ポイントを巡ることができました。

この夏の九州釣行ではチョウザメを釣り上げることができませんでした。そして季節が進んだ12月の九州釣行。覗き込んだ堰の一つにチョウザメで間違いないと思える魚体を確認することができました。
しかしながらこの釣行でもモノにすることが出来ず。
悔しかったので帰りの道中で翌週の大阪から九州の航空券を購入しました。
足掛けで行ったら高校生の時からなので5年。本腰入れて狙い始めたのはここ2年くらいなのですが、思ったより苦戦していました。サクッといったらサクッと釣れるんかな?と当初は舐めてかかっていたのですが、全然そんな事ありませんでした。
そして12月2回目の九州釣行。
おそらく同じ個体と思われるチョウザメを同じ堰の下で確認。
使用する餌はその辺を泳いでいたカワムツの切り身。タックルはそれなりにヘビーなものをチョイスして臨みました。上流に向いている魚体の鼻先に餌を通すコースでトレースすると、魚体付近でラインが止まりました。フッキングを入れて、魚を上げにかかると……、思ったよりもでかい。
しかしながら魚体の大きさの割にそこまで引く事はなく。足元に寄せて細くなっている尾鰭の付け根を掴んでランディング。

やっと釣れた。そんでもって、思ったよりもでかい。
この水系では過去にチョウザメを専門で狙っているおじいちゃんがいたそうで、色々話を聞くことが出来ました。過去に釣ったチョウザメの最大は1メートル20センチほどだそうです。それも1日で複数本釣ったそうで。僕は今回足元に見えた魚体をほぼサイトフィッシングみたいな感覚で釣りましたが、その方は渓流釣りの要領で長竿を使用するとのこと。
長竿を使うことで一度のトレースで広い範囲を狙うことができるんだと。そんでもって切り身なり魚卵なり色々なもので釣れるそうです。コツは川底ギリギリを引いてくる事とのこと。今回僕は足元の魚体を釣ったとは言え、流すレンジはできる限り底ギリギリを意識していました。チョウザメの口の形状からなんとなく察しがつきますが、多分背中より上を流れてきた餌はスルーするんじゃないですかね?
チョウザメは、確かに日本にいる。
キャビアといえば高級食材のイメージ。チョウザメを養殖する理由って多分ほぼキャビアですよね?
本来九州河川にいるはずのないチョウザメが狙って釣れる事態になっているのは驚きであり、本来の生態系のことを考えたら褒められるものではないのかも知れません。
しかしながらイチ釣り人としてはチョウザメが釣れる川というのは非常に面白いし、とってもロマンがあるなと思ったのもまた事実です。今回このチョウザメを釣るまでにいろんな場所に行っていろんな景色を見ましたが、養殖場を悠々と泳ぐチョウザメを見る度に魔が刺しそうになりました。

現実的に不可能だと思うのですが(シンプルに窃盗ですし)巨大な魚が泳いでいるのを見たら狩猟本能が働くのも人間のオスならでは、なんですかね?

各所で飼われているチョウザメを眺めては思いを馳せた、魚体を手にするまでが楽しすぎる旅でした。
チョウザメに限らず、本来そこにいるはずの無い魚を追う旅、アングラ感があって僕は好きです。
関連記事